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ルーズヴェルト民主党政権内部へ浸透したウェア・グループ

戦争勢力の暗躍と、乗っ取られたホワイトハウス シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑩

 その結果、大学生やアングロサクソンの良家、つまり、中堅から上層の政府職員を輩出するような社会階層から多数の共産党員や協力者を獲得できるようになっていきました。

 そういう社会階層の一人が政府に雇われると、あとは人脈を利用して、仲間内でどんどん新しく共産主義者を政府に引き入れていく形で、政府機関への浸透が進みました。

 第三に、一九三三年三月に発足したルーズヴェルト民主党政権がニューディール政策関連の組織を次々に創設し、これらが共産主義者を大量に政府内に引き入れる抜け道になりました。社会主義的政策を行う組織が新規に大量のスタッフを雇ったら、その中に大勢の共産主義者や協力者がいたわけです。

 第四は、一九三三年、ルーズヴェルト政権の第一期発足直後に、ソ連を国家承認したことです。国家承認されたことで、ソ連は大勢の外交官や大使館スタッフを合法的に堂々とアメリカへ送り込めるようになりました。外交官も大使館スタッフも、実態は非合法活動を行う工作員であり、その前からアメリカ国内に侵入していた工作員とともに、強力なスパイ・ネットワークを形成していきます。

 ルーズヴェルト民主党政権下で、連邦政府内にはハロルド・ウェアという共産党員をリーダーとする地下組織「ウェア・グループ」が省庁をまたがって形成されていました。「ウェア・グループ」のメンバーは、ホワイトハウス、国務省、法務省、財務省、労働省、農業調整庁、社会保障庁、全米労働関係委員会、連邦公務員組合、上院、そして、陸軍の軍事施設であるアバディーン性能試験場にも浸透し、名指しされているだけでも二十数人に及んでいました。

 財務官僚のハリー・デクスター・ホワイトはその一人です。また、あとでキーパーソーンとして取り上げるアルジャー・ヒスという国務省の役人も「ウェア・グループ」の一員としてチェンバーズが名前を挙げています。

 ソ連軍情報部(GRU)につながる地下組織「ウェア・グループ」の目的は、単なる政治学習や勉強会ではなく、機密情報を盗み出すスパイ活動だけを行っていたわけでもありません。彼らの最大の目的は「積極工作」、つまり、政府内部に入り込んで政策決定に干渉し、アメリカの政策そのものをソ連に有利な方向に捻じ曲げる政治工作でした。

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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